Hiker Trash (ハイカートラッシュ):ゴミのようにみすぼらしい姿になったハイカーのこと。
昨年の自分のことです。
長距離ハイカーの象徴
毎日40-50km歩き、5日間洗濯もシャワーもせずに歩き続けているとどうしても服はボロボロになり、体は黒く汚れてくる。
汚れた服や体は素晴らしい経験をしている代償としてハイカーの間では誇りの一つとして捕らえられているし、時に辛い経験を共有しているハイカー同士の仲間意識の象徴の一つになっている。
私も例に漏れず歩いていると日に日に汚くなってきて、そのことに満足していました。
「これでハイカートラッシュの仲間入りだ!」
長距離ハイクには街で食料の補給が必要
長距離ハイキングをしていると、避けて通れないのが食料の補給。
ライフルを持って行っている訳でもないので食料の自給自足はできず、補給は街での買い物に依存しています。
スタートから59日目、1092mile歩いたSouth Lake Tahoeというタホ湖の南に位置する大きな街でこの日も補給。ハイカートラッシュ状態で10回以上街に寄って買い物をしているので、いつもの通りスーパーで買い物をして店の外でパッキングしていました。
大量の食料を前にあーでもない、こーでもないとパッキング詰め直しているとスーパーで買い物を終えた母親と小さい子供が歩いてきた。スーパーの出口からまっすぐ車に向かっていて、その通り道にハイカートラッシュと化した私。
母親は子供に「こっちに来なさい」と言い、自分を避けて少し遠回りして車に向かって行った。母親からすればホームレスか何かに見えたのだろう(※アメリカはお薬系廃人のホームレスが多い)、子供に危害が加えられるリスクを減らすために出た行動です。
要は私があの親子に恐怖間を与えてしまった。それも私や他のハイカーが誇りにしている長距離ハイカーの象徴であるハイカートラッシュによって。
暴走族と同じ思考
当時3歳になる姪っ子(溺愛中)がいる私にとって、親子に恐怖感を与えてしまったことにかなりショックを受けました。そんな時頭をよぎったのが暴走族。
彼らは夜な夜なエンジンの空ぶかしをしながらバイクを走らせているが、この音はコールと呼ばれていて、アクセルの捻り加減やクラッチ操作、ギヤ操作を駆使してリズムや音楽(ドラえもんのテーマとか)を奏でているらしい。上手いコールは彼らの仲間内ではコール職人と持て囃されすごいことなのかもしれないが、細かいことを知らない私のような一般人からすれば迷惑極まりないただの雑音。
姪っ子と散歩している時に暴走族が近くを走っていたら、恐怖感を覚え姪っ子の手を引くでしょう。あの親子のように。
ハイカーの世界は狭い
日本と比べてると体臭がきつい人が多くみすぼらしい格好の人が多いアメリカなので、ハイカートラッシュには比較的寛容ではあるけれど、街には良く思わない人も多いです。ハイカートラッシュが持て囃されるのはハイカーの仲間内の狭い世界だけで社会的にはその称号になんの意味も無い。何もかっこ良くはない。
ずっとハイキングしているとハイカーの世界が全てだと勘違いしていましたが、社会との関係は切っても切り離せないので自分が暴走族(ハイカートラッシュ)にならないように歩きたいと思ったDay59でした。
※とは言ってもなかなか綺麗にできないのが長距離ハイカーの辛いところ。せめて服は頻繁に川や湖で洗い、毎日寝る前と街に降りる前にはしっかりと体を拭くようにしてました。